海外旅行へ行く際に荷物をできるだけ減らしたいと考えるのは当然のことですが、モバイルバッテリーに関しては持っていかないという選択にリスクも伴います。スマートフォンの地図アプリや翻訳機能が旅の命綱となる現代において、充電切れは致命的なトラブルに直結しかねません。
また、現地のコンセント事情や飛行機への機内持ち込みに関するルール、容量の制限などを正しく理解していないと、空港で没収されたり現地で充電できなかったりする可能性もあります。さらに、現地でのレンタルサービスや充電器の選び方についても事前に知っておくべき情報は多岐にわたります。
この記事では、海外旅行でモバイルバッテリーがいらないという意見を検証し、安全かつ快適に旅を楽しむための知識とおすすめの活用法について解説していきます。
- 海外旅行にモバイルバッテリーがいらないと言われる理由と必要性
- 海外での具体的な活用シーンや飛行機への機内持ち込みに関するルール
- 海外のコンセント事情や現地での充電器確保に関する注意点と対策
- 旅行スタイルに合わせたモバイルバッテリーの選び方とおすすめ
海外旅行にモバイルバッテリーはいらない?必要性を考察

「重いから持ち歩きたくない」「カフェで充電すればいい」という意見もありますが、海外のカフェは日本ほど充電環境が整っていない場合も多く、また治安の観点からスマホをテーブルに出したまま充電すること自体がリスクになる国もあります。まずは「いらない」という意見の考察とモバイルバッテリーの必要性について、具体的なシチュエーションを交えて解説します。
「モバイルバッテリーはいらない」の声
ネットなどの情報で「海外旅行にモバイルバッテリーは持っていかなくてもなんとかなる」という意見を目にすることがあります。荷物を極限まで減らしたいミニマリスト的な発想や、現地のカフェで充電すれば良いという考え方が主な理由ですが、この意見を鵜呑みにするのは少々リスクがあります。
確かに、一昔前の「ガイドブックと紙の地図」で旅をしていた時代であれば、スマートフォンの電池切れはそこまで致命的ではありませんでした。しかし、現代の旅行スタイルにおいて「いらない」と主張できるのは、以下のかなり限定的なケースに当てはまる場合だけだと考えた方がよいでしょう。
「いらない」派の主張と現実のギャップ
モバイルバッテリー不要論を唱える方の多くは、「街中のカフェやレストランで充電させてもらえばいい」と考えがちです。確かにスターバックスなどのチェーン店では電源が使えることもありますが、海外の個人経営のカフェや古い建物を改装したレストランでは、客席にコンセントがないことのほうが一般的です。
また、治安の観点からも注意が必要です。日本のようにテーブルの上にスマホを置いたまま充電して食事を楽しむ、という行為は、国によっては「どうぞ盗ってください」と言っているようなものです。充電のために片時もスマホから目を離さずに過ごす時間は、せっかくの食事や休憩の質を下げてしまいます。
現地でのレンタルサービスへの過信
もう一つよくあるのが、「ChargeSPOTなどのレンタルサービスが海外にもあるから大丈夫」という意見です。これに関しては、半分正解で半分間違いです。確かに台湾やタイ、シンガポールなど一部のエリアでは普及していますが、「借りたい時にすぐ近くにあるとは限らない」というのが現実です。
さらに言えば、レンタルバッテリーを借りるためのアプリを起動したり、QRコードを読み込んだりするには、そもそもスマホの充電が残っていなければなりません。バッテリー残量がゼロになってからでは、レンタルの手続きすらできないというパラドックス(矛盾)に陥ってしまいます。
現地の電源やレンタルサービスはあくまで「万が一バッテリーをホテルに忘れたり、故障したりした時の緊急手段(保険)」として捉えておくべきです。基本装備としては、日本から使い慣れた信頼できるモバイルバッテリーを持参するのが、最も安全でコストパフォーマンスも高い選択だと言えます。
このように、完全に受動的なツアーや、スマホをあえて使わないスタイルでない限り、自由に行動する個人旅行者が「モバイルバッテリーを持たない」というのは、リスク管理の面から見てもあまりおすすめできないでしょう。
モバイルバッテリーを持たなくても良い例外な人
- 全行程が添乗員付きのバスツアーで、バス座席にUSBポートが完備されている。
- スマホはホテルの金庫に置き、デジタルデトックスをする予定である。
- 地図も翻訳もカメラも使わず、ホテルやリゾート内だけで過ごす。
海外でのモバイルバッテリーの活用例

海外旅行中、私たちのスマートフォンは日本で生活している時とは比べものにならないほどの負荷がかかり、バッテリーを激しく消耗します。「普段は1日持つから大丈夫」という感覚は、海外では通用しません。具体的な要因とシーンを見てみましょう。
1. 地図アプリと位置情報(GPS)の常時使用
見知らぬ土地を歩く際、Googleマップなどの地図アプリは必須です。目的地へのルート検索だけでなく、現在地を常に把握するためにGPS機能を使いますが、これがバッテリー消費の最大の要因です。特に海外では、Wi-Fiルーターと接続したり、ローミング通信を行ったりと通信による負荷も加わるため、画面を見ながら歩いているだけで数時間でバッテリーが50%を切ることも珍しくありません。
2. 翻訳アプリとカメラ機能の多用
現地の言葉が分からない場合、Google翻訳やDeepLなどの翻訳アプリを使うことになります。カメラをかざしてメニューを翻訳する「リアルタイム翻訳機能」は非常に便利ですが、カメラと通信を同時に使うため、電力消費が激しい機能の一つです。また、せっかくの海外ですから写真や動画もたくさん撮りたいはずです。高画質な動画撮影は、あっという間にバッテリーを食いつぶします。
3. 配車アプリや電子チケットの表示
Uber、Grab、Lyftなどの配車アプリを使って移動する場合、ドライバーとの待ち合わせや乗車中のルート確認でスマホ画面を点灯させる時間が長くなります。さらに重要なのが、美術館や鉄道、そして帰りの航空機のチェックイン時に必要な「電子チケット(QRコード)」の表示です。いざ入場ゲートの前で「充電切れでQRコードが出せない」という事態になれば、予約が無駄になるだけでなく、その後のスケジュールも全て破綻してしまいます。
4. 不測の事態や待ち時間の暇つぶし
海外の交通機関は日本ほど正確ではありません。列車が数時間遅れたり、バスが来なかったりすることは日常茶飯事です。そんな待ち時間に、情報収集をしたり、動画を見て時間を潰したりする際にもバッテリーは欠かせません。また、万が一トラブルに巻き込まれた際、大使館や保険会社、家族へ連絡するための電力は、まさに「命綱」となります。
モバイルバッテリーがあれば安心な具体的なシーン
- 空港での入国審査やチェックイン時のEチケット提示
- 長時間のフライトやバス移動での動画視聴・音楽鑑賞・電子書籍の閲覧
- 夜間の外出時、道に迷った際の地図確認や、緊急時に警察・ホテルへ連絡する際
- 同行者とはぐれた際の位置情報共有や通話
飛行機への持ち込み制限と注意点

モバイルバッテリーを海外へ持っていく際、絶対に避けて通れないのが「航空機への持ち込みルール」の理解です。これを知らずに準備をすると、空港の保安検査場で高価なバッテリーを没収・廃棄されるだけでなく、周囲の乗客に迷惑をかけたり、最悪の場合は搭乗を拒否されたりする可能性すらあります。
モバイルバッテリーに使用されている「リチウムイオン電池」は、強い衝撃や圧力、温度変化によって発熱・発火するリスクがある「危険物」として扱われています。そのため、国際的な航空輸送のルール(IATA規定)および各国の航空法により、取り扱いは厳格に定められています。
【重要】預け入れ(受託手荷物)は厳禁
モバイルバッテリーをスーツケースに入れてチェックインカウンターで預けることは、全世界の全ての航空会社で禁止されています。これは、貨物室(無人の場所)で発火した場合、発見が遅れて消火活動ができず、墜落などの大惨事につながる恐れがあるためです。
必ず「機内持ち込み手荷物」(リュックやハンドバッグなど)に入れて、自分の座席まで持って行ってください。
もし誤ってスーツケースに入れたまま荷物を預けてしまった場合、X線検査で発見されます。その後、館内放送で呼び出されて立ち会いのもとスーツケースを開けさせられるか、あるいは勝手に鍵を壊して開けられ、バッテリーを没収された状態で荷物だけが現地に届くことになります。その際、「バッテリーが入っていたため処分しました」という紙切れ一枚が入っているだけです。
詳細なルールについては、国土交通省の公式サイトでも案内されていますので、不安な方は一度目を通しておくことを強くおすすめします。
(出典:国土交通省『機内持込み・お預け手荷物における危険物について』)
保安検査場での提示
手荷物検査場(セキュリティチェック)では、PCやタブレットと同様に、モバイルバッテリーもカバンから出してトレーに載せるよう指示されることが多いです。その際、検査員はバッテリーの「容量表記」を確認します。表記が消えていて読めない場合、「容量不明の危険物」とみなされ、持ち込みを拒否されることがあります。使い古して文字が消えかかっているバッテリーは持っていかない方が無難です。
機内持ち込み容量の基準(mAh・Wh)

「手荷物なら何でも持ち込める」わけではありません。航空機に持ち込めるリチウムイオン電池には、エネルギー量(Wh:ワット時定格量)による明確な制限があります。この基準を理解していないと、大容量バッテリーを持っていったのに空港で捨てる羽目になります。
一般的な持ち込み基準(多くの航空会社の場合)
航空会社によって細かな規定は異なりますが、国際的な標準ルール(IATA)に基づく一般的な基準は以下の通りです。
| 容量(Wh) | 持ち込み可否 | 個数制限 |
|---|---|---|
| 100Wh以下 | 〇(持ち込み可) | 制限なし(または常識的な範囲内) |
| 100Wh超〜160Wh以下 | △(航空会社の許可が必要) | 最大2個まで |
| 160Wh超 | ×(持ち込み不可) | 0個(輸送不可) |
ここで問題になるのが、モバイルバッテリーの本体には「Wh(ワット時)」ではなく、「mAh(ミリアンペアアワー)」と書かれていることが多い点です。そのようなケースでは、私たち利用者は自分でmAhをWhに換算して判断しなければなりません。
mAhからWhへの計算方法
計算式は非常にシンプルです。リチウムイオン電池の一般的な電圧(3.7V)を使って計算します。
Wh(ワット時)= バッテリー容量(mAh) × 電圧(3.7V) ÷ 1000
実際に市販されている主要なモバイルバッテリーの容量で計算してみましょう。
- 5,000mAhの場合
5,000 × 3.7 ÷ 1000 = 18.5Wh
余裕で持ち込み可能です。 - 10,000mAhの場合
10,000 × 3.7 ÷ 1000 = 37Wh
全く問題ありません。最も一般的なサイズです。 - 20,000mAhの場合
20,000 × 3.7 ÷ 1000 = 74Wh
100Wh以下なので、基本的に個数制限なく持ち込めます。 - 26,800mAh(超大容量)の場合
26,800 × 3.7 ÷ 1000 = 99.16Wh
ギリギリ100Wh以下に収まるように設計されています。持ち込み可能です。 - 30,000mAhの場合
30,000 × 3.7 ÷ 1000 = 111Wh
100Whを超えるため、航空会社によっては事前の申告や個数制限(最大2個)の対象になります。
結論として、20,000mAhクラスまでのモバイルバッテリーであれば、ほぼ全ての航空会社で問題なく機内持ち込みが可能です。それ以上の超大容量モデルを持っていく場合は、利用する航空会社のホームページで規定を必ず確認するようにしましょう。
海外旅行での充電器はどうする?

モバイルバッテリーだけを持って行って、それを充電するための「充電器(ACアダプター)」や「ケーブル」を忘れてしまうと、バッテリーを使い切った時点で詰んでしまいます。「モバイルバッテリーさえあれば大丈夫」というのは誤解です。ここでは、充電器周りの準備について詳しく解説します。
変圧器は必要?(電圧の違い)
「海外で日本の電化製品を使うと爆発する」と聞いたことがあるかもしれませんが、これは昔の話です。現在販売されているスマートフォン(iPhoneやAndroid)、モバイルバッテリー、そしてそれらを充電するACアダプターのほとんどは、「ユニバーサル対応(グローバル対応)」になっており、「INPUT: 100V-240V」と記載されています。
世界の電圧は100V(日本)から240V(イギリスなど)の範囲に収まっているため、この記載があれば、変圧器は不要で、そのまま現地のコンセントに挿して使えます。ただし、念のため出発前に持っていく充電器の説明欄を見て、「100-240V」という表記があるか確認してみましょう。
変換プラグは必須!(コンセント形状の違い)
電圧は対応していても、コンセントの穴の形(プラグ形状)は国によって全く異なります。日本の「縦線2本(Aタイプ)」がそのまま挿せるのは、アメリカ、台湾、タイの一部など限られた国だけです。
- Cタイプ / SEタイプ:ヨーロッパ全域、韓国など(丸いピンが2本)
- BFタイプ:イギリス、シンガポール、香港など(角ばったピンが3本)
- Oタイプ:オーストラリア、ニュージーランドなど(ハの字型)
渡航先の国がどのタイプを使っているか事前に調べ、対応する「変換プラグ」を必ず用意してください。複数の国を周遊する場合や、将来的に他の国へ行くことも考えるなら、世界中の形状に対応できる「マルチ変換プラグ」を1つ持っておくと非常に便利です。
以下の海外変換プラグは軽量・コンパクトで世界200カ国に対応しているためおすすめです。
ケーブルの予備と長さ
充電ケーブルは断線したり、紛失したりしやすいアイテムです。現地で探すのも手間なので、必ず予備を1本持っていきましょう。また、海外のホテルのコンセント位置は不親切なことが多く、ベッドから遠い場所にしかないこともあります。そのため、少し長め(1.5m〜2m)のケーブルがあると、ベッドでスマホをいじりながら充電できるので快適です。
海外対応の延長コードの選び方については以下の記事でも紹介しています。

海外旅行向けモバイルバッテリーのおすすめと選び方

ここまでの解説で、海外旅行におけるモバイルバッテリーの重要性は十分にご理解いただけたかと思います。「いらない」というのは、現代の旅においてはあまりに無防備な状態です。しかし、だからといって「とりあえず大容量のものを買えばいい」というわけでもありません。
適当に選んだ重すぎるバッテリーは旅の疲労を増幅させますし、充電速度が遅いバッテリーはホテルでの短い滞在時間にフル充電できず、翌日の行動に支障をきたします。ここでは、海外旅行という特殊な環境に最適化された、賢いモバイルバッテリーの選び方を紹介します。
モバイルバッテリーを選ぶ基準
海外旅行用のモバイルバッテリーを選ぶ際、重視すべきは「携帯性(サイズ・重量)」、「容量」、そして「機能性(充電速度・ポート数)」の3つのバランスです。
まず大前提として、常に持ち歩くものであるため、カバンの中で邪魔にならないサイズ感が求められます。パスポートサイズ程度で、厚みが抑えられた薄型モデルは、サコッシュやウエストポーチにも入れやすく、観光中の出し入れもスムーズです。
また、機能面では「パススルー充電」に対応していると便利です。これは、モバイルバッテリーをコンセントに繋ぎながら、同時にスマホも充電できる機能です。海外のホテルではコンセントの数が限られていることが多いため、1つのコンセントで「バッテリー本体」と「スマホ」の両方を寝ている間に充電完了できる機能は実用的です。
おすすめのバッテリー容量と重さ

海外旅行では、1日中歩き回ることが基本です。そのため、カバンに入れても負担にならない「200g以下(卵3〜4個分)」を目安に選ぶのが鉄則です。また、重さと同様に重要なのが「形状」です。
円筒形やサイコロ型の分厚いバッテリーは、容量が小さくてもバッグの中でコロコロと転がり、ポケットに入れると不格好に膨らんでしまいます。おすすめは、スマートフォンと重ねて持てる「薄型(フラット)モデル」です。観光中、スマホを充電しながら地図を見たり写真を撮ったりする際、スマホの裏に重ねて片手で持てる薄さであれば、ケーブルが邪魔にならずストレスフリーに撮影が可能です。
「大は小を兼ねる」と言いますが、モバイルバッテリーに関しては「大は重い」です。必要以上に大きな容量は、ただの重りになります。ご自身の旅行スタイルや日数に合わせて、最適な容量を選びましょう。
| 容量クラス | 充電回数(スマホ目安) | 重量目安 | おすすめのユーザー・シーン |
|---|---|---|---|
| 5,000mAh | 約1回分 | 約100g〜130g (卵2個分) | 【日帰り・1泊・都市部観光】 荷物を極限まで軽くしたい人。万が一の予備として持っておきたい人。スティック型や小型タイプが主流。 |
| 10,000mAh ★推奨 | 約2回〜3回分 | 約180g〜250g (スマホ1台分) | 【一般的な海外旅行・2泊以上】 1日中外出し、地図やカメラを多用しても安心な容量。重量と容量のバランスが最も良く、迷ったらこれを選ぶべき。 |
| 20,000mAh〜 | 約4回以上 PC充電も可 | 約350g〜500g (ペットボトル1本分) | 【長期滞在・バックパッカー・複数人】 コンセントがない環境が続く場合や、PC・タブレットも充電したい人。友人や家族とシェアする場合。ただし重い。 |
旅行用に迷った際には「10,000mAh」のモデルがおすすめです。最新のスマホを2回以上フル充電できる安心感がありながら、カバンに入れても負担にならない200g前後の製品が多く販売されています。20,000mAh以上は、LCCで機内エンタメがなく自分のタブレットで映画を見続ける場合や、電源確保が難しい地域へ行く場合など、明確な目的がある場合に限りましょう。
海外で役立つ急速充電とポート数

次に確認すべきは「充電スピード」です。旅行中は、ホテルでの休憩時間や、移動中のわずかな時間にどれだけ回復できるかも快適さにつながります。ここでキーワードとなるのが「PD(Power Delivery)」です。
パッケージや仕様書に「PD対応」「PD 20W」「PD 30W」といった表記があるか確認してください。PD(パワーデリバリー)対応のモバイルバッテリーと、それに対応したケーブル(USB-C to Lightning、またはUSB-C to USB-C)を使えば、iPhoneやAndroidスマホを30分で約50%まで急速充電できます。
従来の古い規格(5Wや10W)の充電器だと、フル充電までに3〜4時間かかることもあり、これでは「今すぐ出かけたいのに充電が溜まらない」というストレスに繋がります。特に最新のスマートフォンを使っている場合は、その性能を活かすためにも、出力(W数)が20W以上のPD対応モデルを選びましょう。
出力ポート数とケーブルの端子
海外旅行では、自分のスマホだけでなく、レンタルWi-Fiルーター、ワイヤレスイヤホン、同行者のスマホなど、充電すべき機器が増えがちです。そのため、出力ポートは最低でも2つ(2台同時充電可能)あるものが望ましいです。
また、現在は接続端子の過渡期にあるため、「USB-C」と「USB-A」の両方を備えたモデルが最も汎用性が高く安心です。これなら、最新のケーブルも、昔から使っている古いケーブルも両方使え、現地の友人のスマホを充電してあげる際などにも困りません。
コンセント一体型モデルのメリット

「とにかく荷物を減らしたい」「忘れ物をしたくない」という方に、おすすめしたいのが「コンセントプラグ一体型(ハイブリッド型)」のモバイルバッテリーです。
1台2役のメリット
このタイプは、モバイルバッテリー本体に折りたたみ式のACプラグ(コンセントプラグ)が内蔵されており、「スマホの充電器(ACアダプター)」と「モバイルバッテリー」が合体しています。
これの何が素晴らしいかと言うと、海外旅行の荷物リストから「スマホの充電器」を減らせる点です。ホテルに着いたら、このモバイルバッテリーを直接コンセントに挿し、そこからケーブルでスマホに繋げば、充電器として機能します。そして朝起きて出かける時は、コンセントから抜けば、そのまま満充電されたモバイルバッテリーとして持ち出せます。
デメリットと注意点
ただし、構造上、通常のモバイルバッテリーより少しサイズが大きく、重くなる傾向があります。また、コンセントに挿した際に本体の重みで抜け落ちやすかったり、隣のコンセント穴を塞いでしまったりすることもあります。それでも、「充電器を別に持ち歩かなくていい」「充電器をホテルに忘れるリスクがない」という点は、海外旅行においてメリットとなるはずです。
安全性と信頼性のおすすめブランド

海外旅行用のモバイルバッテリー選びで、容量や価格以上に私が最も重要視していただきたいのが「安全性」と「信頼性」です。粗悪なリチウムイオン電池は、発火や爆発のリスクを孕んだ「危険物」になり得るため、「たかが電池でしょ?」と侮らないようにしましょう。
Amazonや楽天などのECサイトでは、無名メーカーの格安製品が大量に販売されています。「20,000mAhの大容量で2,000円!」といった破格の商品は魅力的ですが、これらを海外旅行に持っていくことは基本的におすすめできません。ここでは、なぜブランド選びが重要なのか、その理由と具体的に信頼できるメーカーをご紹介します。
格安・ノーブランド品に潜む4つのリスク
安価な製品には、安くできるだけの「理由」があります。日本国内での普段使いならまだしも、失敗が許されない海外旅行においては、以下のリスクが致命的となります。
- 容量詐称(スペック偽装)
「20,000mAh」と書かれているのに、実際の中身は10,000mAh程度しか充電できないケースが後を絶ちません。これでは「2回充電できるはずが1回もできなかった」という事態になり、旅の計画が狂います。 - 安全回路の省略
コストカットのために、過充電や過熱を防ぐ保護回路(安全装置)が省かれていることがあります。これにより、バッテリー自体が発熱・膨張するだけでなく、接続した大切なスマートフォンを過電圧で破壊してしまう恐れすらあります。 - 製品表記の不備による没収
保安検査場ではバッテリーのスペック(定格容量)を確認されますが、格安品はこの表記がシールで貼られているだけで剥がれていたり、そもそも記載がなかったりすることがあります。「容量不明」と判断されると、即座に没収・廃棄対象となります。 - 突然の故障(初期不良)
品質管理が甘いため、旅行初日に突然動かなくなることも珍しくありません。現地で買い直す手間と時間は大きな損失です。
信頼できるおすすめのブランド
数千円の差で、旅の安全と安心が買えるなら安いとも言えます。世界的に実績があり、品質管理が徹底されているメーカーを選びましょう。特におすすめできる代表的なのは以下のブランドです。
Anker(アンカー)|米国
もはや説明不要の業界No.1シェアを誇るリーディングブランドです。独自の急速充電技術「PowerIQ」や、多重保護システムによる安全性が極めて高く、世界中の旅行者に愛用されています。製品の仕様表記もしっかりと刻印されており、空港でのトラブルも皆無です。
【Anker 公式】
Philips(フィリップス)|オランダ
電動歯ブラシやシェーバーなどのヘルスケア製品で有名なオランダの巨大企業ですが、実はモバイルバッテリー分野でも非常に高品質な製品を展開しています。特に「DLPシリーズ」などは、欧州の厳しい安全基準をクリアした信頼性の高さと、機能美を追求したデザインが特徴です。安全性にこだわる方には特におすすめです。
【Philips 公式】
Belkin(ベルキン)|米国
カリフォルニア発のデジタルアクセサリーメーカーで、Appleの公式サイトや直営店でも取り扱われている数少ないブランドの一つです。Apple製品との親和性が高く、安全性へのこだわりは業界トップクラス。iPhoneユーザーで、デザインと絶対的な安心感を求めるなら間違いのない選択肢です。
【Belkin 公式】
Elecom(エレコム)|日本
パソコン周辺機器でおなじみの国内大手サプライメーカーです。家電量販店での入手性が高く、日本の電気用品安全法(PSE)への準拠はもちろん、日本語での分かりやすいマニュアルや手厚いサポート体制が魅力です。
【Elecom 公式】
これらのメーカーの製品は、日本の電気用品安全法に基づく「PSEマーク」を取得しており、容量の表記も正確です。また、万が一の故障時もサポートがしっかりしています。海外という非日常の空間だからこそ、道具は信頼できるものを選ぶようにしましょう。
おすすめのモバイルバッテリー

ここでは、数あるモバイルバッテリーの中から、特に「海外旅行」というシーンに最適化されたおすすめのモデルを厳選してご紹介します。選定基準は、機内持ち込み可能な容量(10,000mAhクラス)、持ち運びやすい携帯性、そして旅先でのトラブルを未然に防ぐ信頼性の高さです。
Anker Power Bank (10000mAh, 22.5W)
【究極の携帯性を求める方へ】ストラップがケーブルに変身する次世代モデル
Ankerの大ベストセラーモデルが正統進化した製品です。特筆すべきは、付属のUSB-Cケーブルが本体のストラップとして機能するデザインです。これにより、「ケーブルをホテルに忘れて充電できない」という旅行中のありがちなミスを物理的に防ぐことができます。
厚さは約16mmと世界最薄クラスで、パスポートと一緒にサコッシュに入れても嵩張りません。本体表面にはディスプレイが搭載されており、バッテリー残量が1%単位で表示されるため、「あとどれくらい使えるか」が一目で分かり、見知らぬ土地でのバッテリー切れの不安を解消してくれます。
- 容量:10,000mAh
- 特徴:ストラップ兼用ケーブル、残量ディスプレイ、薄型設計
- こんな人におすすめ:荷物を極限まで減らしたい方、ケーブルの紛失が心配な方
Anker MagGo Power Bank (10000mAh, Slim)
【iPhoneユーザーの決定版】ケーブルレスで快適な撮影旅を
最新の充電規格「Qi2」に対応した、マグネット式ワイヤレスモバイルバッテリーです。iPhoneの背面にピタッと吸着させるだけで最大15Wの急速充電が開始されるため、煩わしいケーブルの取り回しから解放されます。
旅行中は写真を撮ったり地図を見たりとスマホを頻繁に操作しますが、ケーブルが垂れ下がっていないため、充電しながらの操作性が抜群に良いのが魅力です。厚さ約15mmのスリム設計で、スマホと重ねて持っても違和感がありません。もちろん、USB-Cポートを使った有線での急速充電(最大30W)も可能です。
- 容量:10,000mAh
- 特徴:マグネット式ワイヤレス充電(Qi2)、最大30W入出力
- こんな人におすすめ:iPhone 12以降のユーザー、観光中にスマホを使い続けたい方
Anker Power Bank (10000mAh, Fusion, Built-In USB-C ケーブル)
【荷物削減の王様】充電器・ケーブル・バッテリーの3役を1台で
私が「海外旅行最強」と推すハイブリッドモデルです。コンセントプラグとUSB-Cケーブルが本体に一体化しており、これ1台あれば、スマホの充電器も予備ケーブルも持っていく必要がありません。
ホテルではコンセントに直接挿して「充電器」として使い、外出時はそのまま抜いて「モバイルバッテリー」として持ち出せます。パススルー充電に対応しているため、寝ている間にスマホとバッテリーの両方を満タンにできます。最大30W出力に対応しており、MacBook AirなどのノートPCへの緊急充電も可能なパワフルさも魅力です。
- 容量:10,000mAh
- 特徴:コンセントプラグ一体型、USB-Cケーブル内蔵、パススルー充電
- こんな人におすすめ:充電器などの周辺機器を減らしたい方、忘れ物をしたくない方
Philips (フィリップス) モバイルバッテリー 10000mAh
【ケーブル管理からの解放】2種のケーブル内蔵でどんな機器も充電
ヘルスケア製品で有名なフィリップスですが、モバイルバッテリーも非常に優秀です。このモデルの最大の特徴は、「Lightningケーブル」と「USB-Cケーブル」の両方が本体に内蔵されている点です。
例えば、自分は最新のiPhone(USB-C)を使っているけれど、同行者は古いiPhone(Lightning)を使っている、あるいはAirPodsはまだLightning端子だ、といった端子が混在する状況でも、これ1台で全て対応できます。重量も約176gと非常に軽量で、カードサイズに収まるコンパクトさは街歩きに最適です。
- 容量:10,000mAh
- 特徴:Lightning & USB-Cケーブル内蔵、軽量176g、4台同時充電
- こんな人におすすめ:複数の異なる端子のデバイスを持ち歩く方、軽さを重視する方
Belkin (ベルキン) モバイルバッテリー 3C対応 10000mAh
【Apple公式も認める信頼性】3台同時充電で友人とシェア
Appleストアでも取り扱われる信頼のブランド、Belkinのモデルです。スリムな形状ながら、USB-Cポート1つとUSB-Aポート2つの計3ポートを搭載しており、最大3台のデバイスを同時に充電できます。
海外旅行では、スマホ、レンタルWi-Fi、カメラなど充電したい機器が増えがちですが、これなら一度にまとめて給電可能です。また、友人やパートナーの充電が切れそうな時に、サッとポートを貸してあげることができるのも3ポートならではのメリットです。シンプルで洗練されたデザインは、Apple製品との相性も抜群です。
- 容量:10,000mAh
- 特徴:3ポート搭載(3台同時充電)、スリム設計、多重保護システム
- こんな人におすすめ:Wi-Fiルーターなど複数デバイスを持つ方、友人との旅行
Elecom (エレコム) モバイルバッテリー 10000mAh
【日本メーカーの安心感】薄型でカバンにすっきり収まる
国内大手サプライメーカー、エレコムの薄型モデルです。厚さ約15.5mmのフラットな形状は、スマートフォンと重ね持ちしやすく、カバンのポケットにもすっきりと収まります。
「まとめて充電」機能に対応しており、スマホとバッテリーを接続した状態で充電すると、まずはスマホを優先的に充電し、完了後に自動でバッテリー本体の充電を開始してくれます。日本の電気用品安全法(PSE)に適合した安全性の高さと、国内メーカーならではの分かりやすい説明書やサポート体制は、初めてモバイルバッテリーを購入する方にとっても大きな安心材料となるでしょう。
- こんな人におすすめ:国内メーカーの安心感を求める方、コストパフォーマンス重視の方
- 容量:10,000mAh
- 特徴:薄型ラウンド形状、まとめて充電対応、USB-A×2 & Type-C×1
総括:海外旅行にモバイルバッテリーはおすすめ?いらない?
「海外旅行にモバイルバッテリーはいらない」という考えは、スマホに依存しない一昔前の旅行スタイルであれば通用したかもしれません。しかし、現代の海外旅行において、スマートフォンは地図であり、財布であり、翻訳機であり、そして身分証明書でもあります。前述したように、そのライフラインを維持するためのモバイルバッテリーを持たないことは現地でのリスクを高めてしまいます。
「重い・邪魔」というデメリットは、適切な容量(10,000mAh前後)や、最新の軽量モデルを選ぶことで十分に解消できます。また、機内持ち込みのルール(必ず手荷物に入れ、100Wh以下にする)さえ守れば、トラブルになることもありません。
たった数千円と数百グラムの投資で、旅先での「充電が切れたらどうしよう」という不安から解放され、写真も動画も地図も気にせずに利用できるためコストパフォーマンスの高い旅行グッズだと言えます。ぜひ、あなたの旅のスタイルに合った信頼できる相棒(モバイルバッテリー)を見つけて、安心で快適な海外旅行を楽しんでください。





