カナダと聞いて、皆さんはどのようなスポーツを思い浮かべるでしょうか。多くの方は、冬の寒さが厳しい北国のイメージからウィンタースポーツが盛んな国だと想像するかもしれません。実際にカナダでは国技であるアイスホッケーをはじめ、雄大な自然を活かしたスキーやスノーボードが非常に有名です。
しかし、実はそれだけではありません。夏の時期にはラクロスや野球、サッカーといった競技も人気が高く、季節を問わず多様なスポーツイベントが開催されており、近年ではバスケットボールやテニスといった分野でも世界ランキング上位に食い込むようなプロ選手が登場し、国際的な注目を集めています。
カナダへの留学や旅行を計画している方にとって、こうした現地のスポーツ事情を知っておくことは、カナダ人のライフスタイルや文化を深く理解する上で欠かせない要素となるはずです。この記事では、カナダの有名なスポーツと現地での人気競技、そして意外な発祥の歴史や文化についてご紹介します。
- カナダの有名なスポーツと現地で人気を誇る競技の特徴
- カナダの国技であるアイスホッケーとラクロスの歴史的背景
- カナダ発祥の意外な競技や世界的に有名なスポーツブランド
- 現地の観戦文化やライフスタイルとしてのスポーツの楽しみ方
カナダの有名なスポーツと人気競技

広大な国土と四季折々の変化に富んだ自然環境を持つカナダでは、地域や季節によって多様かつ独自のスポーツ文化が根付いています。まずは、カナダ社会におけるスポーツの立ち位置や、意外と知られていない発祥の歴史、そして現地の人々が熱狂する人気競技の全体像について、その背景を含めて解説していきます。
特徴的なカナダのスポーツ文化
カナダにおけるスポーツは、単なる余暇の娯楽や健康維持の手段という枠を大きく超え、多文化社会を結びつけるための重要な「共通言語」としての役割を果たしています。この国でスポーツについて語る際、避けて通れないのが、法律によって明確に定められた「2つの国技(National Sports)」が存在するという事実です。これは世界的に見ても非常に珍しい事例であり、カナダという国家の成り立ちや歴史的変遷を色濃く反映しています。
まず、冬の国技として指定されているのは、誰もが納得する「アイスホッケー」です。近代カナダの形成と共に発展し、国民のアイデンティティそのものと言っても過言ではないほどの地位を確立しています。一方、夏の国技には先住民族(ファースト・ネイションズ)の伝統に由来する「ラクロス」が指定されています。1994年に制定された「カナダ国技法(National Sports of Canada Act)」により、アイスホッケーとラクロスは対等な地位を与えられました。これは、ヨーロッパ系移民が持ち込んだ近代スポーツの文化と、この地に古くから根付いていた先住民族への敬意や精神性が融合していることを象徴しており、カナダのスポーツ文化における「多文化共生」と「歴史的和解」の精神を表しています。
また、カナダは移民国家であるため、スポーツの多様化も急速に進んでいます。伝統的な人気競技に加え、移民たちが持ち込んだサッカーやクリケット、バスケットボールなどが都市部を中心に爆発的に普及しており、地域コミュニティや学校教育の現場でも、人種や性別、障がいの有無に関わらず誰もが参加できる「インクルージョン(包摂性)」を重視したスポーツ環境の整備が国策として推進されています。スポーツを通じて異なるバックグラウンドを持つ人々が交流し、新たなコミュニティを形成していく姿は、現代カナダ社会の縮図とも言えるでしょう。
- 冬季:アイスホッケー (Ice Hockey)
近代カナダの発展と共に組織化され、国民の誇りや団結の象徴として絶対的な地位を持つ競技。 - 夏季:ラクロス (Lacrosse)
先住民族の伝統と精神性を象徴し、カナダの文化的ルーツとしての重要性が法的に認められた競技。
カナダの有名なスポーツや競技

カナダのスポーツシーンを語る上で、絶対に外せない主要な競技をピックアップしてご紹介します。これらのスポーツは単に観客数が多いだけでなく、カナダ人の日々の会話や生活リズムに深く根付いているものばかりです。現地の文化を理解するための「必修科目」とも言えるラインナップを見ていきましょう。
アイスホッケー (Ice Hockey)
説明不要の国民的スポーツです。「カナダ人の血液には氷が流れている」と冗談交じりに言われるほど、この国におけるホッケーの重要度は群を抜いています。NHL(ナショナルホッケーリーグ)には、モントリオール・カナディアンズやトロント・メープルリーフスといった歴史あるチームが所属しており、試合のある夜は街中がチームカラーに染まります。スピード、技術、そして激しいボディコンタクトが融合したこの競技は、カナダの冬の象徴です。
ラクロス (Lacrosse)
アイスホッケーと並び、法律で定められた「夏の国技」です。もともとは北米先住民族が何百年も前から行っていた神聖な儀式にルーツを持ちます。カナダでは、屋外で行うフィールドラクロスよりも、屋内(アイスホッケーのリンクから氷を抜いた場所)で行う「ボックスラクロス」が主流で、攻守の切り替えが極めて速いスリリングな展開が魅力です。
バスケットボール (Basketball)
近年、最も勢いのあるスポーツと言えばバスケットボールです。トロント・ラプターズが2019年にNBA初優勝を果たしたことで、国全体の熱狂に火がつきました。考案者がカナダ人(ジェームズ・ネイスミス博士)であることや、NBAで活躍するカナダ人選手が増加していることもあり、特に都市部の若者の間ではホッケーに迫るほどの人気を博しています。
野球 (Baseball)
夏の娯楽の代表格です。カナダにはMLB(メジャーリーグベースボール)に所属する唯一の球団「トロント・ブルージェイズ」があり、彼らが活躍すると国中が応援ムードに包まれます。アメリカと同様にホットドッグやビールを片手に、開放的なスタジアムで観戦を楽しむスタイルが定着しています。
サッカー (Soccer)
「観るスポーツ」としても成長中ですが、何より「プレイするスポーツ」として圧倒的な人気があります。子供の競技人口登録者数は国内No.1を誇り、移民の多いカナダでは多文化交流の架け橋にもなっています。女子代表チームがオリンピックで金メダルを獲得したことや、男子代表のワールドカップ出場により、注目度は年々上昇しています。
カナディアンフットボール (Canadian Football / CFL)
アメリカンフットボールによく似ていますが、フィールドが広く、選手が1人多い(12人制)など、独自のルールを持つカナダ国内のプロリーグです。特に西部の州ではホッケーに匹敵する人気があり、年間王者決定戦の「グレイ・カップ」は、国民的なお祭り騒ぎとなる一大イベントです。
カーリング (Curling)
「氷上のチェス」とも呼ばれるカーリングは、カナダが世界屈指の強豪国として知られる競技です。競技レベルの高さはもちろんですが、冬の夜に地域のクラブに集まり、試合後に一杯飲みながら交流を楽しむ「社交スポーツ」として、地域コミュニティに深く愛されています。
カナダ発祥のスポーツと歴史背景

実は、私たちが普段何気なく親しんでいるメジャーなスポーツの中には、カナダが発祥の地であったり、カナダ人が考案したものが数多く存在することをご存知でしょうか。カナダ人は長く厳しい冬の環境下において、屋内で楽しめる遊びや、新しいルールを用いた競技を創造することに長けていたと言われています。これらのスポーツの起源を知ることは、カナダ人のクリエイティビティや工夫の精神に触れることでもあります。
最も有名な例は、世界中で愛されている「バスケットボール」です。この競技は現在アメリカのスポーツというイメージが強いですが、その考案者はオンタリオ州アルモンテ出身のカナダ人、ジェームズ・ネイスミス博士です。1891年、アメリカのマサチューセッツ州にあるYMCAのインストラクターだった彼は、冬の間に屋内で学生たちが荒れることなく、かつ安全に楽しめるスポーツとして、体育館のバルコニーに桃の籠(バスケット)を吊るし、そこにサッカーボールを投げ入れるゲームを考案しました。これが現在のバスケットボールの原型であり、彼の考えた「13のルール」が基礎となっています。
また、ボウリングの一種である「5ピン・ボウリング」もカナダ独自の発明です。1909年にトーマス・F・ライアンによって考案されたこの競技は、通常の10ピンボウリングよりもボールが小さく(手のひらサイズ)、指穴がないのが特徴です。そのため、力の弱い子供や高齢者でも楽しみやすく、また「ストライク」が出にくいというゲーム性の高さから、カナダ国内では非常にポピュラーなファミリースポーツとして親しまれています。
さらに、パラリンピックの人気競技である「車いすラグビー」も、1977年にウィニペグのアスリートたちによって考案されました。当初は「マーダーボール」と呼ばれるほど激しいコンタクトが特徴でしたが、現在では戦略的かつエキサイティングなパラスポーツとして世界中に広まっています。
以下にもカナダ発祥のスポーツと背景について簡単にまとめています。
| 競技名 | 発祥・考案の背景 |
|---|---|
| バスケットボール | カナダ人ジェームズ・ネイスミス博士が考案。冬の屋内体育用として、桃の籠を用いたのが始まり。 |
| 近代アイスホッケー | 19世紀後半にモントリオールでルールが成文化され、組織的な近代スポーツとして確立された。 |
| ラクロス | 北米先住民族の伝統競技を基に、カナダで近代的なルール整備と組織化が行われた。 |
| 5ピン・ボウリング | 10ピンのボールが重すぎるという顧客の声に応え、トロントで考案されたカナダ独自のボウリング。 |
| 車いすラグビー | ウィニペグで考案。車いす同士の激しいタックルが認められる、戦略性の高いパラスポーツ。 |
観戦と参加で異なる人気スポーツ

カナダにおける「人気スポーツ」を正しく理解するためには、テレビの前で熱狂する「観戦(Spectator Sports)」の人気と、実際に市民が日々の生活で楽しむ「参加(Participation Sports)」の人気という、2つの異なる視点を持つことが重要です。実は、この「観る」と「やる」のランキングには、現代カナダ社会の実情を映し出す興味深い乖離が存在します。ここでは、メディアの熱量や統計データを踏まえた視点で、カナダの人気スポーツを紹介します。
【観戦】国民が熱狂するプロスポーツ
メディア露出やファンの熱量、経済効果という点では、やはり以下の3大スポーツが圧倒的な存在感を放っています。これらは単なる競技を超え、国民的イベントとして機能しています。
| 競技名 | 人気の背景 |
|---|---|
| アイスホッケー (NHL) | 不動の人気です。NHLのプレーオフ時期には、街中のパブがユニフォームを着たファンで溢れかえります。カナダ人にとってホッケーを観ることは、地域のアイデンティティを確認する儀式のようなものです。 |
| カナディアンフットボール (CFL) / アメフト (NFL) | 日本ではあまり知られていませんが、カナダ独自のプロリーグ「CFL」は、特に西部の州(サスカチュワン州やマニトバ州など)でホッケーに匹敵する絶大な人気を誇ります。年間王者決定戦「グレイ・カップ」は、カナダ国内で最も視聴率が高い単日スポーツイベントの一つです。 |
| 野球 (MLB) | トロント・ブルージェイズはカナダ唯一のMLB球団として、夏場のスポーツシーンを独占します。チームが好調な時は「国全体のチーム」として応援され、国民的一体感を生み出します。 |
【参加】市民が実際にプレーする競技
一方で、実際に市民が汗を流しているスポーツを見ると、様相はガラリと変わります。「手軽さ」「コスト」「健康志向」を重視する傾向が強く、以下のような競技が生活に根付いています。
| 競技名 | 人気の背景 |
|---|---|
| サッカー | 「子供に最初に習わせるスポーツ」として、アイスホッケーを抜き去り圧倒的No.1の登録者数を誇ります。ボール一つあればできる手軽さと、用具代の安さが魅力です。また、移民国家であるカナダにおいて、サッカーは多文化なバックグラウンドを持つ人々を繋ぐ「共通言語」としての役割も果たしています。 |
| ゴルフ | カナダは人口あたりのゴルフ場数が世界トップクラスです。日本とは異なり、公営のパブリックコースであれば数千円程度で気軽にラウンドできるため、富裕層だけでなく、若者からシニアまで幅広い層が楽しむ「身近なレジャー」として定着しています。 |
| 個人フィットネス(水泳・ランニング・サイクリング) | カナダ統計局の調査によると、成人のスポーツ参加率で常に上位に来るのは、チームスポーツではなく個人競技です。豊かな自然環境を活かしたハイキングやサイクリングは、カナダ人の週末の過ごし方そのものだと言えます。 |
かつては誰もがプレイしたホッケーですが、近年は用具代やリンク使用料の高騰、早朝深夜に及ぶ練習時間の過酷さから、中低所得層にとって「プレイしたくてもできない高級スポーツ(Elite Sport)」になりつつあるという課題があります。対照的に、安価でできるサッカーへのシフトが加速しています。
さらに、直近のトレンドとして見逃せないのが「ピックルボール」の流行です。テニスと卓球を組み合わせたようなこの競技は、身体への負担が少なくコミュニティ形成に役立つことから、シニア層を中心に「カナダで最も急成長しているスポーツ」となっています。
このように、「観るならホッケー、やるならサッカーやゴルフ」というのが、現代のカナディアン・ライフスタイルのトレンドだと言えるでしょう。
カナダの有名なスポーツと魅力を深掘り

ここからは、カナダを象徴する主要な競技の詳細な魅力や、近年世界的な評価を高めているトップアスリート、そしてファッションアイテムとしても注目のカナダ発スポーツブランドについて、さらに深掘りして解説していきます。
アイスホッケーが人気の理由
カナダにおけるアイスホッケーは、単なる人気スポーツの枠を超えた「宗教」にも例えられるほどの絶対的な存在です。カナダの小さな町であっても、地域コミュニティの中心には必ず「アリーナ(スケートリンク)」があり、そこは住民たちの社交場となっています。子供たちは歩き始めるのと同じくらいの時期からスケート靴を履き、氷上でのバランス感覚を養います。いわば、ホッケーはカナダ人のDNAに刻み込まれた文化だと言えます。
北米の最高峰プロリーグであるNHL(ナショナルホッケーリーグ)は、カナダとアメリカのチームで構成されていますが、選手の大半はカナダ出身者が占めています。カナダ国内には「モントリオール・カナディアンズ」「トロント・メープルリーフス」「バンクーバー・カナックス」など、熱狂的なファンベースを持つ7つのフランチャイズが存在します。特にシーズン終盤のプレーオフや、北米最古のプロスポーツトロフィーである「スタンレー・カップ」を巡る戦いは熾烈を極めます。カナダのチームが優勝すれば国中が歓喜に沸きますが、残念ながら1993年以降、カナダのチームは優勝から遠ざかっており、王座奪還は国民の悲願となっています。
競技としての魅力は、何と言っても「氷上の格闘技」と称されるスピード感と激しさです。時速50km近いスピードで滑走しながら、時速160kmを超えるパックを操る技術、そしてフェンス際での激しいボディチェック(体当たり)は、見る者を圧倒する迫力があります。また、ホッケーはチームワークと自己犠牲の精神を重んじるスポーツでもあり、厳しい冬を共に乗り越えるカナダ人のメンタリティとも深く共鳴しています。
もう一つの国技ラクロスの特徴

もう一つの国技であるラクロスは、カナダの歴史と精神性を語る上で欠かせない、非常に意義深いスポーツです。その起源は12世紀頃まで遡り、北米先住民族が「創造主のゲーム(The Creator’s Game)」として行っていた神聖な儀式にあります。彼らにとってラクロスは、病の治癒を祈り、部族間の紛争を平和的に解決し、創造主への感謝を捧げるための重要な手段でした。
現代のカナダでは、屋外の広い芝生で行う「フィールドラクロス」だけでなく、夏場に氷を溶かしたアイスホッケーのリンク(コンクリート床)を使って行う「ボックスラクロス(屋内ラクロス)」が盛んです。壁に囲まれた狭いコートで行われるため、ボールがアウトにならず、攻守の切り替えが極めてスピーディーなのが特徴です。また、ホッケー同様に激しいボディコンタクトが認められており、非常にエキサイティングな展開が楽しめます。
多くのプロアイスホッケー選手(ウェイン・グレツキーなど)は、少年時代に夏はラクロス、冬はホッケーをプレイする「マルチスポーツ」のアスリートとして育ちました。ラクロスで培った狭い空間でのハンドリング技術や身体の使い方はホッケーにも活かされるため、両競技は技術的にも文化的にも密接な関係にあります。現在でも、先住民族主体のチーム「Haudenosaunee Nationals」が国際大会で活躍するなど、ラクロスはスポーツを通じた民族の誇りと文化復興の象徴となっています。
スキーとスノーボードの魅力

世界有数の雪質と、ロッキー山脈をはじめとする壮大で美しい山岳地帯を持つカナダは、世界中のスキーヤーやスノーボーダーにとって憧れの聖地です。カナダのスキーリゾートの特徴は、その圧倒的なスケールの大きさと、大自然そのものを楽しむスタイルにあります。
特にブリティッシュコロンビア州にある「ウィスラー・ブラッコム(Whistler Blackcomb)」は、北米最大のスキーリゾートとして不動の人気を誇ります。2010年バンクーバー冬季オリンピックの会場にもなったこの地は、2つの巨大な山がゴンドラで結ばれ、200以上のコースが存在します。初心者向けの緩やかなコースから、断崖絶壁を滑り降りるエキスパート向けのコースまでバリエーションが豊富で、麓のビレッジも含めたリゾート全体の完成度が極めて高いのが魅力です。
また、アルバータ州のバンフ国立公園内にある「レイク・ルイーズ」や「サンシャイン・ビレッジ」では、ユネスコ世界遺産に登録された絶景の中で滑走することができます。内陸部の極めて乾燥した気候が生み出す雪は「シャンパン・パウダー」と呼ばれ、驚くほど軽く、雲の上を滑っているような感覚を味わえます。さらに、リフトのない手つかずの雪山へヘリコプターでアクセスして滑る「ヘリスキー」は、カナダが発祥の地であり、究極のパウダー体験を求める愛好家たちが世界中から集まります。
カナダのスポーツは強いのか

「カナダのスポーツは世界的に見て強いの?」という疑問に対しては、「冬季競技においては世界最強クラスの強豪であり、夏季球技においても近年急速に台頭している」という答えが適切でしょう。
まず冬季オリンピックにおいて、カナダは常にメダル獲得数の上位常連国です。特にアイスホッケー、カーリング、フリースタイルスキー、スノーボードなどでは圧倒的な強さを誇ります。これは、2010年バンクーバー五輪の開催を機に導入された国家的な選手強化プログラム「Own the Podium」の成果でもあります。有望な選手や競技に資金と科学的サポートを集中させる戦略が功を奏し、ウィンタースポーツ大国としての地位を盤石なものにしています。
一方、かつては世界の壁に阻まれることが多かった夏季競技や球技でも、近年は目覚ましい成果を上げています。その背景には、移民による多様な才能の流入と、育成システムの成熟があります。男子サッカー代表は36年ぶりにワールドカップ出場を果たし、女子代表は東京オリンピックで金メダルを獲得しました。男子バスケットボール代表もワールドカップでメダルを獲得するなど、NBA選手を多数擁する「黄金世代」が活躍しています。また、テニスでは国別対抗戦「デビスカップ」で初優勝を飾るなど、個々の才能が世界トップレベルで開花し始めています。
世界で活躍するプロスポーツ選手
カナダは人口約4,000万人の国ですが、その規模からは想像できないほど多くのスーパースターを世界中のスポーツシーンに輩出しています。彼らの活躍は国内の子供たちに大きな夢を与え、次世代の競技人気やレベルの底上げに大きく貢献しています。
- ウェイン・グレツキー(Wayne Gretzky / アイスホッケー)
「ザ・グレート・ワン(偉大なる者)」と称される伝説的な選手。NHLにおける通算最多得点、最多アシストなど数々の不滅の記録を保持しており、カナダスポーツ界の神様的存在です。 - シドニー・クロズビー(Sidney Crosby / アイスホッケー)
現代のカナダを象徴する英雄。2010年バンクーバー五輪決勝での劇的な決勝ゴール(ゴールデン・ゴール)は、カナダ国民の記憶に深く刻まれています。 - シェイ・ギルジャス=アレクサンダー(Shai Gilgeous-Alexander / バスケットボール)
NBAでMVP級の活躍を見せる若きスーパースター。現在のカナダバスケットボール界の顔であり、ファッションアイコンとしても注目されています。 - アルフォンソ・デイヴィス(Alphonso Davies / サッカー)
ドイツの名門バイエルン・ミュンヘンで活躍する世界最高峰のサイドバック。難民キャンプ出身という生い立ちを持ち、ピッチ内外で多くの人にインスピレーションを与えています。 - ビアンカ・アンドレスク(Bianca Andreescu / テニス)
2019年の全米オープンでセリーナ・ウィリアムズを破って優勝し、カナダ人として初のグランドスラムシングルス優勝を果たした歴史的な選手です。
有名なスポーツブランドとウェア

カナダの厳しくも美しい自然環境と、都市とアウトドアが近接したライフスタイルは、世界的に成功する高品質なスポーツ・アウトドアブランドを数多く生み出しました。これらのブランドは極限状態に耐えうる「機能性」と、洗練された「デザイン性」を高度に融合させているのが特徴で、スポーツシーンだけでなく日常のファッションアイテムとしても絶大な支持を得ています。
| ブランド名 | 特徴 |
|---|---|
| Lululemon (ルルレモン) | バンクーバー発祥。「ヨガウェア」から始まり、スポーツウェアを日常着として着る「アスレジャー」ブームを世界的に牽引したパイオニア。その着心地の良さと機能美で熱狂的なファンを持つ。 |
| Arc’teryx (アークテリクス) | ノースバンクーバー発祥。始祖鳥のロゴで有名。クライミングハーネスの製造から始まり、妥協のない技術力で作られる高機能シェルジャケットは、登山家からストリートファッションまで幅広く愛されている。 |
| Canada Goose (カナダグース) | トロント発祥。極寒地での活動を支えるプロ仕様のダウンジャケットとして誕生。「Made in Canada」に強いこだわりを持ち、現在はラグジュアリーな冬のファッションステータスとして世界中で人気。 |
| CCM / Bauer | アイスホッケープレイヤーなら誰もが知る世界的トップブランド。スケート靴やスティックなどの用具市場において圧倒的なシェアと信頼を誇る。 |
総括:カナダの有名なスポーツ
ここまで、カナダの有名なスポーツについて、その歴史的背景から人気競技ランキング、注目のトップアスリートやブランドまで、多角的な視点で幅広く解説してきました。カナダにおけるスポーツは、長く厳しい冬をコミュニティと共に乗り越えるための知恵であり、多様な文化を持つ人々を一つにするための大切な「絆」でもあります。
もしあなたがカナダを訪れる機会があれば、ぜひNHLの試合を生で観戦してアリーナの熱気を肌で感じたり、ルルレモンのウェアに身を包んで現地の人のように早朝のスタンレーパークをランニングしてみたりしてください。あるいは、パブで地元のファンと一緒にスクリーンに向かって声援を送るだけでも、カナダ人の温かさと情熱に触れることができるでしょう。カナダのスポーツ文化を知れば、あなたのカナダ滞在はより深く、忘れられないものになるはずです。





