日本と外国のマナーの違いを解説|食事や日常生活の具体例一覧

日本と外国のマナーの違いを解説|食事や日常生活の具体例一覧

海外旅行や留学、あるいはビジネスの現場で外国の方と接する機会が増えると、どうしても気になってくるのが「日本と外国の違い」や、そこから生じる「マナー」に関する常識ではないでしょうか。私たち日本人が普段何気なく行っている「当たり前」の行動が、一歩海外へ出ると驚くべきマナー違反になってしまったり、逆に現地のユニークな習慣が私たちにとって衝撃的に映ったりすることは日常茶飯事です。

言葉の壁は翻訳機で越えられても、文化の壁は「知る」ことでしか乗り越えられません。それぞれの国には、長い歴史の中で培われた独自の背景や価値観が根付いています。この記事では、そんな世界の常識やルールについて、私自身が実際に海外で冷や汗をかいた失敗談や、現地で学んだ生きた知識を交えながら、詳しくお話ししていきます。違いを恐れるのではなく、違いを楽しむための準備を一緒に始めていきましょう。

記事のポイント
  • 日本と外国で大きく異なる基本的な生活習慣やルールの背景
  • 海外ではタブーとされる具体的なハンドサインや食事のマナー
  • ビジネスや公共の場で気をつけるべき日本との振る舞いの違い
  • 各国の文化背景を深く理解してトラブルを避けるためのポイント
目次

日本と外国のマナーの違い|挨拶や日常生活の例

日本と外国のマナーの違い|挨拶や日常生活の例

日本で暮らしていると疑うことすらない「常識」も、国境を越えれば全く通用しないことが多々あります。「郷に入っては郷に従え」と言いますが、そもそも何に従えば良いのかを知らなければ対応できません。まずは、日常生活の中で特に違いを感じやすい、挨拶や公共ルール、そして生活習慣に関する基礎的なマナーについて、その背景にある「なぜ?」を含めて見ていきましょう。

マナーの理解が大切な理由とは

「マナー」と聞くと、テーブルでのナイフやフォークの順番や、名刺交換の角度といった「堅苦しいルール」を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、マナーの本質はもっとシンプルで温かいものです。

マナー(Manners)という言葉は、ラテン語の「manuarius(手に関する)」に由来し、もともとは「手を使う方法」や「扱い方」を意味していました。一方、似た言葉であるエチケット(Etiquette)は、フランス語の「荷札(ラベル)」が語源だと言われています。宮廷に入る際のマナーが書かれた札や、花壇に入らないための立札がルーツです。

現代においてマナーとは、人々が集団で暮らしていく上で、お互いが不快な思いをせず、スムーズに関係を築くための「社会的な潤滑油」のような存在です。単に行儀が良いことをアピールするためだけにあるのではありません。なぜマナーがこれほどまでに大切にされているのか、その理由は大きく分けて3つあります。

1. 無用なトラブルや摩擦を避けるため

もし全員が「自分のやりたい放題」に行動したらどうなるでしょうか。列に並ばず割り込んだり、大声で騒いだりすれば、当然そこには争いやストレスが生まれます。マナーは「これをすれば相手は嫌がらないだろう」「こうすればスムーズに進むだろう」という、長い歴史の中で培われた知恵の結晶です。お互いの領域を侵さないためのクッション材として機能しています。

2. 「信頼できる人間」であることを示すため

マナーを守ることは、言葉を使わずに「私はあなたを尊重しています」「私はこのコミュニティのルールを理解しており、敵ではありません」というメッセージを相手に送ることになります。特に初対面の相手やビジネスの場において、適切なマナーは最強の武器になります。逆に、どれだけ優秀なスキルを持っていても、最低限のマナーが欠けているだけで「信頼できない人」というレッテルを貼られてしまうリスクもあります。

3. 衛生と安全を守るため(生存の知恵)

世界のマナーの中には、単なる礼儀作法だけでなく、命や健康を守るための実用的な意味が含まれているものが多くあります。例えば、「食事の前に手を洗う」「咳をする時に口を覆う」といった行為は、病原菌の拡散を防ぐための衛生行動がマナーとして定着したものです。また、インドや中東で左手を食事に使わないのも、衛生上の区分けという理由が背景にあります。

形は違っても「心」は世界共通
国や地域によって、お辞儀をするのか握手をするのか、麺をすするのかすすらないのかといった「マナーの形」は全く異なります。しかし、その根底にあるのは常に「相手への配慮(思いやり)」「敬意」です。形だけを丸暗記するのではなく、「なぜそうするのか?」という相手を思う心に目を向けることが、マナーを理解する第一歩です。

挨拶やハンドサインなどの違い

挨拶やハンドサインなどの違い

コミュニケーションの第一歩である挨拶は、日本と外国の違いが最も顕著に、そして最初現れる場面です。日本では相手とのパーソナルスペース(物理的な距離)を保ち、お辞儀をするのが一般的ですが、海外の多くの国、特に欧米や南米では握手、ハグ、チークキスなど、身体的な接触(スキンシップ)を伴う挨拶が主流です。

特に欧米のビジネスシーンや初対面の挨拶において、「握手」は相手への信頼と敵意がないことを示す重要な儀式です。ここで日本人がやってしまいがちなのが、相手から目を逸らし、お辞儀をしながら弱々しく手を握ることです。実はこれ、海外では「Dead Fish(死んだ魚)」と呼ばれる非常に印象の悪い握手とされています。「自信がない」「信頼できない」「興味がない」というネガティブなメッセージとして受け取られてしまうのです。相手の目をしっかりと確認するくらいの気持ちでアイコンタクトを取り、適度な力強さで握り返すこと。これだけで、あなたの第一印象は劇的に変わります。

また、言葉以上に気をつけたいのが「ハンドサイン」です。私たちが写真撮影で無邪気に使う「ピースサイン」ですが、手の甲を相手に向ける「裏ピース」は、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドなどでは、中指を立てるのと同等の侮辱表現となります。良かれと思ってカメラに向けたポーズが、現地の人を激怒させるきっかけになりかねません。

国によって意味が異なるハンドサイン

以下のサインは、日本では肯定的でも海外ではタブーとなる代表例です。

  • OKサイン(親指と人差指で輪を作る)
    ブラジルやフランスの一部、ドイツなどでは、性的な意味や「自分はゼロ(無価値)」、あるいは肛門を指す卑猥な侮辱表現として捉えられるため厳禁です。
  • サムズアップ(親指を立てる)
    欧米では「いいね!」ですが、中東や西アフリカ、ギリシャの一部では性的な侮辱(「くたばれ」に近い意味)になることがあります。
  • 手招き(掌を下に向けて指を動かす)
    日本式の手招きは、欧米では「あっちへ行け(シッシッ)」に見えます。逆に欧米式の「掌を上に向けて指をクイクイする」動作は、日本では挑発に見えますが、海外では一般的な「こっちへ来て」の合図です。

公共交通機関などのルールの違い

公共交通機関などのルールの違い

日本の電車内といえば、シーンと静まり返り、携帯電話での通話はマナー違反というのが鉄則です。「他人に迷惑をかけない」という日本特有の集団主義的な価値観が最も色濃く出る場所と言えるでしょう。しかし、一歩海外に出ると、その常識は覆されます。

アメリカやヨーロッパの多くの国では、電車やバスの車内で通話することは特に禁止されていません。友人や家族と日常会話程度のボリュームで電話を楽しむのはごく普通の光景であり、誰も気に留めないのです。これは「公共の場であっても、個人の自由は尊重されるべき」という個人主義の考え方が根底にあるからです。「通話=悪」と決めつけてイライラしてしまうのは、日本人特有の感覚かもしれません。

また、飲食に関しても寛容な国が多いです。欧米ではコーヒー片手に地下鉄に乗るビジネスマンは日常風景ですし、ドイツなどの一部地域ではビールを飲みながら乗車することも珍しくありません(もちろん、泥酔して暴れるのはNGですが)。

整列乗車の概念がない国も多い

日本人が特に戸惑うのが「列」の概念です。日本ではホームに整然と列を作って待ちますが、イタリアや中国など一部の国では、電車が到着すると「我先にと乗り込む」スタイルが一般的です。ドアが開いた瞬間に降りる人と乗る人がぶつかり合うカオスな状況になることもありますが、彼らに悪気があるわけではなく、それがその社会での「効率的な(あるいは生存競争的な)乗り方」なのです。「並ばないなんて野蛮だ」と腹を立てるよりも、「ここではそういうルールなんだ」と割り切り、怪我をしないように身を守りながら流れに乗ることが、海外でのストレスを減らすコツです。

優先席の感覚の違い
海外では「優先席(Priority Seat)」と書かれていても、空いていれば若者でも普通に座ります。しかし、お年寄りや妊婦さんが乗ってくると、自然に席を譲ります。「座ってはいけない席」として空けておく日本とは違い、「必要な人が来たら譲ればいい」という考え方が浸透しています。

トイレや入浴など生活習慣の違い

トイレや入浴など生活習慣の違い

水回りの事情は、その国のインフラレベルや衛生観念をダイレクトに反映するため、日本と外国の違いを最も痛感するポイントの一つです。特に日本のトイレの清潔さ、ウォシュレットの普及率、そして「紙が流せる」という環境は、世界的に見ても非常に恵まれています。

アジアの一部(台湾、韓国、タイなど)や南米、ギリシャなどの国々では、下水管が細かったり、水圧が弱かったり、トイレットペーパーの繊維が溶けにくかったりするため、使用した紙を便器に流さずに、備え付けの大きなゴミ箱に捨てるというルールが一般的です。日本人の感覚では「拭いた紙をゴミ箱に溜める」こと自体に抵抗があるかもしれませんが、うっかり流してしまうと配管が詰まり、ホテルや店舗に多大な迷惑と損害を与えてしまいます。個室に入ったらまずは「紙を流していいか」のステッカーや表示を確認し、大きなゴミ箱があればそこに捨てるよう心がけましょう。

お風呂は「浸かる」ものではなく「洗う」もの

入浴に関しても大きな違いがあります。毎日肩までお湯に浸かってリラックスするのは、水資源が豊富で火山国(温泉文化)である日本特有の贅沢な習慣です。海外、特にオーストラリアやアメリカ西海岸など乾燥した地域では水が貴重であるため、バスタブにお湯を溜めることは「水の無駄遣い」と見なされることがあります。

ホームステイやシェアハウスでは、「シャワーは1人10分以内」といった厳しいルールが設けられていることも珍しくありません。また、海外のバスタブは身体を洗う場所(洗い場)を兼ねているため、バスタブの外にお湯を溢れさせると、床下の階に水漏れを起こす大惨事になります。シャワーカーテンは必ずバスタブの内側に入れ、外に水が漏れないようにするのが鉄則です。

ヨーロッパの公衆トイレは「有料」が常識
ヨーロッパの駅や街中にある公衆トイレは、基本的に有料(50セント〜1ユーロ程度)です。入り口に改札のようなゲートがあったり、管理人の”マダム”がお皿を持って座っていたりします。いざという時に「小銭がない!」と焦らないよう、常にコインを用意しておくのが賢明でしょう。

くしゃみに関連するマナーの違い

くしゃみに関連するマナーの違い

文化の違いは、時に「面白い!」「なんで?」と感じる発見にもつながります。その代表例が、身体の生理現象に関するマナーです。

日本では人前で鼻をかむのは少し恥ずかしい行為とされ、すすりながら耐えることがありますが、欧米ではこれが真逆になります。鼻をすする音(Sniffing)は「不快」「不潔」「マナー違反」とみなされ、非常に嫌がられます。会議中や食事中であっても、鼻をすするくらいなら、「Excuse me」と断って堂々と鼻をかむ方が、遥かに礼儀正しいとされているのです。海外に行く際は、ポケットティッシュ(海外のものは分厚くて丈夫です)を常に携帯し、音を立ててすする癖が出ないように注意しましょう。

くしゃみで他人と会話が始まる?

欧米には、くしゃみをした人に対して「Bless you(お大事に/神のご加護を)」と声をかける素敵な習慣があります。これは中世のペスト流行時にくしゃみが初期症状だったことや、「魂が抜けないように」祈ったことに由来すると言われています。

面白いのは、これが友人同士だけでなく、電車で隣に座った見知らぬ人や、すれ違いざまの他人に対しても自然に行われることです。もしあなたが海外でくしゃみをして、誰かに「Bless you!」と言われたら、照れずに笑顔で「Thank you!」と返しましょう。そこからちょっとした会話が生まれ、現地の人の温かさに触れることができるかもしれません。

海外のチップ文化における注意点

海外のチップ文化における注意点

日本人にとって最も馴染みがなく、かつ「いくら払えばいいの?」「どうやって渡すの?」と最大のストレスになりがちなのがチップ制度です。日本では「良いサービスは料金に含まれている」と考えられていますが、海外では「サービスには対価を払う」という考え方が根付いています。

特にアメリカやカナダでは、チップは単なる「心付け」ではありません。サービス業(ウェイターやタクシードライバーなど)で働く人々の基本給は、チップを受け取ることを前提に極めて低く設定されている場合があります。つまり、チップを払わないことは、彼らの正当な労働賃金を支払わないこと(食い逃げに近い感覚)と捉えられかねないのです。

レストランでは、合計金額(税抜き価格がベースとなることが多いですが、税込みでも可)の15%〜20%程度を置くのがマナーです。サービスが素晴らしければ25%、逆に悪くても最低限10%〜15%は置くのが暗黙のルールです。「習慣がないから」といってチップを置かずに店を出ようとすると、マネージャーに呼び止められて「何か不手際がありましたか?」と尋ねられるケースもあるので気をつけましょう。

ヨーロッパやアジアのチップ事情

一方で、ヨーロッパの多くの国(フランスやイタリアなど)では、サービス料(Service Charge)があらかじめ会計に含まれていることが増えています。この場合、アメリカほど高額なチップは不要ですが、カフェやタクシーではお釣りの端数を切り上げて渡したり、テーブルに小銭を少し残したりする「スマートな心付け」が好まれます。

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地域・国チップの目安考え方・注意点
アメリカ・カナダ必須
(飲食代の15〜20%)
重要な収入源。払わないのはマナー違反。クレジットカード決済時に記入欄があることも多い。
ヨーロッパ国による
(端数〜10%程度)
「Service Charge Included」の記載があれば義務ではないが、小額を残すとスマート。
東南アジア気持ち程度
(高級店やスパ等)
屋台や食堂では不要。観光客向けのホテルやスパでは期待されることがある。
日本・中国・韓国基本不要逆に「お釣りですよ」と追いかけられることも。高級旅館など一部の例外を除く。

海外のチップ文化については以下の記事でも紹介しています。

日本と外国のマナーの違い|食事やビジネスの例

日本と外国のマナーの違い|食事やビジネスの例

日常生活のルール以上に、その国の文化や宗教観が色濃く反映されるのが「食」と「仕事」の場面です。ここでのマナー違反は、単なる恥ずかしさだけでなく、相手への敬意を欠く行為としてビジネスや人間関係にヒビを入れてしまう可能性もあります。ここでは、より具体的なシチュエーションに焦点を当てて、私たちが気をつけるべき振る舞いについて深掘りしていきます。

食事のマナーにおける文化の違い

食事のスタイルは国によって千差万別です。ここでは食事マナーに関してよく挙げられる日本と外国の違いについて紹介します。

食器・食べ方のマナー

まず、日本人が無意識にやってしまう「食器を持って食べる」という行為。これは日本料理のマナーとしては「器を手に持つのが美しい所作」とされていますが、韓国や欧米の多くの国では「ガツガツしている」「行儀が悪い(犬食いのように見える)」とされることがあります。基本的に海外では器はテーブルに置いたまま、カトラリーや箸を使って口に運ぶのがグローバルなスタンダードです。

特に韓国では、ご飯茶碗であっても持ち上げずにテーブルに置いたまま、スプーンですくって食べるのが正式なマナーです。日本と同じ箸文化圏であっても、こうした細かいルールの違いがあるため注意が必要です。

インド、中東、東南アジアの一部では、カトラリーを使わずに手を使って食事をする文化があります。ここで絶対に守らなければならないのが、「不浄の手」とされる左手を使わないという宗教的なルールです。食事は必ず右手のみで行います(左手はトイレ処理などに使う手とされるため)。

現地の人々にとって、手で食べることは「指先で温度や感触を確かめ、五感で食事を楽しむ」という神聖な意味合いもあります。「汚い」と敬遠するのではなく、郷に入っては郷に従い、彼らの流儀を尊重する姿勢が信頼関係を築く鍵となります。

麺類を食べる際のマナー

日本の食文化を語る上で欠かせないのが、ラーメン、そば、うどんをすすって食べる日本独自の食べ方です。しかし、この音は海外では「ヌードル・ハラスメント(ヌーハラ)」という造語が生まれるほど、生理的に受け付けられない不快な音として認識されることが多いのが現実です。西洋のテーブルマナーでは、スープやパスタを音を立てて食べることは、トイレの音やゲップと同じくらい失礼で下品な行為とされています。

海外にある日本食レストランや、現地の友人と食事をする際は、たとえラーメンであっても音を立てずに静かに食べるのが無難な配慮と言えるでしょう。パスタのようにフォークに巻き付けるか、レンゲの上で小さくまとめて口に運ぶとスマートです。ただし、近年では日本のアニメや日本食ブームの影響で、「日本では音を立てるのがシェフへの賞賛らしい」と理解を示してくれる外国人も増えてきています。相手が日本文化に詳しい場合は、「日本ではこうやって食べるんだよ」と教えてあげるのも良いコミュニケーションになるでしょう。

食べ物を残すか・完食するか

日本の食育では「出されたものは残さず食べる」ことが美徳とされ、米粒一つ残さないことが、作ってくれた人や食材の命への感謝を表すと教えられてきました。「もったいない精神」は世界に誇れる日本の価値観です。

しかし、中国や韓国など一部のアジア圏の伝統的な宴席マナーでは、逆に「少しだけ残す」ことがホスト(招待してくれた人)への敬意とされる場合があります。これは「これ以上食べられないほど、十分な量のおもてなしを受けました(満腹です)」という満足のサインだからです。もしきれいに完食してしまうと、「まだ足りない(食事が少なすぎる)」という催促の意味に取られ、ホストが慌てて追加料理を注文してしまう…というすれ違いが起こることがあります。

仕事やビジネスでのマナーの違い

仕事やビジネスでのマナーの違い

ビジネスの現場でも、日本と外国の違いは顕著です。日本では初対面の際に名刺交換が非常に重要視され、両手で受け取り、テーブルの上に丁寧に並べるのがマナーですが、欧米では名刺はあくまで「連絡先のメモ」程度の扱いです。挨拶では名刺交換よりも、しっかりとした握手と自己紹介、そしてスモールトーク(雑談)で場の空気を温めることが最優先されます。名刺を片手で受け取ったり、すぐにポケットにしまったりしても、それは決して失礼な行為ではありません。

また、会議での振る舞いも大きく異なります。日本では「空気を読む」「調和を乱さない」ことが美徳とされますが、欧米の多くの企業では「発言しない人は、会議に参加していないのと同じ」とみなされます。沈黙は金ではなく、「意見がない」「貢献意欲がない」と判断されてしまうのです。拙い英語であっても、自分の意見を主張し、議論に参加する姿勢こそが、プロフェッショナルとして評価されます。

休暇に対する考え方の違い

ヨーロッパなどでは、夏に2週間以上の長期バカンスを取ることが当たり前であり、権利として確立しています。「仕事のために私生活を犠牲にする」という感覚は薄く、家族との時間や自分の人生を楽しむことを最優先します。メールの返信が遅れても「バカンス中だから仕方ない」とお互いに許容し合う文化は、働き方改革が進む日本にとっても参考になる部分が多いでしょう。
(出典:総務省統計局『労働力調査』などのデータでも日本の有給取得率の変化が見られますが、欧米との差は依然として存在します。)

オンラインにおけるマナーの傾向

オンラインにおけるマナーの傾向

マナーや常識というのは、決して古くから変わらない固定されたルールではありません。時代が移り変わり、テクノロジーが進化し、人々の意識が変われば、当然のようにマナーもアップデートされていきます。特にここ数年は、急速なデジタル化によって、世界の当たり前が揺れ動いています。

オンライン会議でのエチケット

リモートワークやオンライン会議が日常化したことで、画面越しでの振る舞いに関する新しいマナーが形成されつつあります。ここで面白いのが、リアルな場と同様に、デジタル空間でも文化差が現れている点です。

例えば、Zoomなどのオンライン会議において、欧米やラテンアメリカ諸国では「カメラをオンにする」ことが信頼関係構築の基本とされています。「顔を見せない=隠し事をしている、不安」と捉えられる傾向が強いためです。一方で日本では、プライバシー保護や通信環境への配慮から、カメラオフが許容されるケースも少なくありません。グローバルな会議に参加する際は、通信トラブルがない限り、顔を出してオープンな姿勢を示すのが無難な選択と言えるでしょう。

絵文字による解釈ギャップ

さらに、テキストコミュニケーションにおける「絵文字(Emojis)」の解釈にも変化が起きています。

世界共通語のように思える絵文字ですが、世代や文化によって受け取り方が異なります。例えば、シンプルな「笑顔(😊)」のマーク。欧米では純粋な好意や親しみやすさを表しますが、中国や一部の若者文化の間では、文脈によって「皮肉」「不信感」「とりあえずの愛想笑い(本心ではない)」として使われるケースが増えています。ビジネスチャットなどで安易に多用すると、意図しないニュアンスで伝わってしまうリスクがあることを知っておきましょう。

外国の代表的なマナー具体例一覧

外国の代表的なマナー具体例一覧

世界を見渡すと、日本では想像もつかないようなユニークなマナーや、その国独自のルールが存在します。「知らなかった」で誤解やトラブルなどにならないよう、代表的なものを押さえておきましょう。ここからは外国での具体例をピックアップしてご紹介します。

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エリア・国気をつけるべきマナー・行動理由・背景・詳細
シンガポールガムの持ち込み・
噛むこと禁止
街の美観を損なうとして法律で厳しく規制されています。持ち込みが見つかると高額な罰金が科される場合があるため、旅行時の荷物には要注意です。
イギリス列(Queue)への
割り込み厳禁
イギリス人は列を作ることを神聖な公平性のルールと捉えています。どんなに急いでいても割り込みは最大のタブーであり、マナーを守ることが重視されます。
欧米全般
(特に北米)
鼻をすすらない
(Sniffing禁止)
鼻をすする音は、周囲に不快感を与える非常にマナーの悪い行為とされます。人前であっても「Excuse me」と言って、ハンカチやティッシュで豪快にかむ方が衛生的で礼儀正しいとされます。
ドイツ歩行者信号の絶対厳守車が来ていなくても赤信号で渡ることは「子供への悪影響(教育的配慮)」として厳しく見られます。ルールを守る精神が強く、他人から注意されることもあります。
中国
台湾・香港
時計をプレゼントしない「時計を贈る(送鐘)」の発音が「死を看取る(送終)」と同じであるため、不吉な贈り物とされタブーです。同様に「傘(散=別れ)」「靴(逃げる)」も避ける傾向があります。
ロシア敷居をまたいでの
握手・受け渡し禁止
玄関の敷居をまたいだ状態で握手をしたり物を渡したりするのは不吉とされています。必ず家の中に入るか、相手に外に出てもらってから行います。
タイ
トルコ・中東
足の裏を向けない足は身体の中で「最も不浄な部分」とされています。足を組んで座る際や、仏像・神聖な場所の前で、足の裏を人や対象物に向けることは強い侮辱になります。
台湾・韓国
東南アジア等
トイレの紙を流さない
(備え付けゴミ箱へ)
配管が細い、水圧が弱いなどの理由で、トイレットペーパーを流すと詰まる場所が多くあります。個室内に大きなゴミ箱がある場合は、使用済みの紙はそこに捨てるのがルールです。
欧米全般ドア・ホールド
(ドアを押さえる)
建物に入る際、自分の後ろに人が居たら、ドアが閉まらないように手で押さえて待つのが当たり前のマナーです。これを行わないと「冷たい人」「無作法」と思われます。
イスラム圏異性の写真撮影に注意特に現地の女性に無断でカメラを向けることは、宗教的・文化的に重大なトラブルになる可能性があります。撮影前には必ず許可を取り、慎重に行動しましょう。

欧米では「レディファースト」が形式的なものではなく、生活の一部として徹底されています。エレベーターの乗り降り、ドアの開閉など、男性は女性を優先するのが当たり前。ビジネスシーンであっても、男性が女性の上司や同僚にドアを開けて待つ光景は日常です。日本男性が海外へ行く際は、照れずにスマートに行動できるよう意識しておくと好感を持たれるでしょう。


挨拶・ジェスチャーの具体例一覧

挨拶・ジェスチャーの具体例一覧

言葉以上に雄弁なのが、身体を使ったコミュニケーションです。良かれと思ったジェスチャーが誤解を生まないよう、以下の点に注意しましょう。

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国・地域アクション・しぐさ意味・ルール・背景
タイ
ベトナムなど
頭を触ってはいけない精霊信仰において頭は「精霊が宿る神聖な場所」。子供が可愛くても、頭を撫でるのは絶対的なタブーです。
欧米全般腕組みはしない日本では「考え中」のポーズですが、欧米の会話中では「拒絶(心を開いていない)」や「威嚇」のサインと取られるため避けるべきです。
ドイツ
フランスなど
乾杯は必ず目を見るアイコンタクトを取らないのは失礼とされます。特にドイツでは「目を見ないと7年間不幸に見舞われる」というジンクスがあり重要視されます。
イギリス
オーストラリア
裏ピース禁止
(手の甲を相手に向ける)
「Vサイン」を裏返すと、中指を立てるのと同等の最大級の侮辱行為になります。写真撮影や注文の数を示す際も注意が必要です。
ブラジル
フランスなど
OKサイン禁止
(指で輪を作る)
日本では「了解」の意味ですが、ブラジルなどでは肛門を指す卑猥なジェスチャーや、「自分はゼロ(無価値)」という意味になり侮辱となります。サムズアップ(親指を立てる)が無難です。
ブルガリア
(ギリシャ一部)
頷きと首振りが逆「首を縦に振る(頷く)」がNO、「首を横に振る」がYESを意味します。日本とは真逆のため、イエス・ノーの意思表示で大きな誤解を招く代表例です。
ギリシャ掌を相手に向ける禁止
(ストップの動作)
「ムンジャ」と呼ばれ、かつて罪人の顔に泥を塗った習慣に由来する侮辱のポーズです。「5」を示す際や「待って」の動作で掌を相手に向けないよう注意しましょう。

海外での食事のマナー具体例一覧

海外での食事のマナー具体例一覧

食卓にはその国の歴史や宗教観が色濃く反映されます。日本とは異なる「美味しい食べ方」や「タブー」を見てみましょう。

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国・地域食事のルール意味・理由・背景
ドイツジャガイモは
ナイフで切らない
茹でたジャガイモをナイフで切ると「中まで火が通っていないと思っているのか?」という疑いのメッセージになりかねません。フォークの背で潰してソースと絡めるのが礼儀です。
ハンガリービールで乾杯は
音を鳴らさない
19世紀のオーストリアとの戦争で、敵国が勝利の祝杯でビールグラスを合わせた歴史的背景から、現在でも年配の方を中心にグラスを当てない習慣があります。(ワイン等はOK)
韓国お酒を飲むときは
横を向く
儒教の影響が強く、目上の人の前で正面を向いて飲むのは失礼にあたります。必ず体や顔を少し横に向け、手で口元を隠して飲むのがマナーです。
イタリア魚介パスタに
チーズをかけない
魚介の繊細な風味がチーズの強さで損なわれると考えられており、シェフへの侮辱と取られることがあります。また、カプチーノは朝の飲み物であり、食後に頼むと驚かれます。
インド
中東など
左手で食べない
(右手を使う)
左手はトイレの処理などに使う「不浄の手」とされています。食事や神聖な場所での握手などは必ず右手を使います。
中国・韓国
(伝統的マナー)
料理を少し残す「食べきれないほど十分なおもてなしを受けました」という満足のサインです。完食すると「足りない」という意味になります。
フランス両手をテーブルの
上に出しておく
日本では手を膝の上に置くのが行儀が良いとされますが、フランスでは「武器を持っていない」「隠し事をしていない」ことを示すため、手首から先をテーブルの上に出しておくのがマナーです。

このような具体例を知っておくだけで、現地でのトラブルを未然に防ぐことができるはずです。とはいえ、すべてを完璧に覚える必要はありません。「国が違えばルールも違う」という柔軟な心構えを持ち、周囲の行動をよく観察して真似ることから始めてみましょう。


総括:日本と外国のマナーの違い

ここまで、日本と外国の違いやマナーについて、食事、挨拶、生活習慣、ビジネスなど様々な角度からご紹介してきました。世界には多種多様な文化があり、「日本の常識は世界の非常識」になり得る一方で、私たちが海外の文化から学べることもたくさんあります。

最も大切なのは、知識としてマナーを覚えるだけでなく、「自分の常識だけが正解ではない」という柔軟な心を持つことです。そして、「郷に入っては郷に従え」の精神で、現地の文化や人々をリスペクトしようとする姿勢さえあれば、多少の失敗は笑顔で許してもらえるものです。「違い」を恐れず、むしろその違いを楽しむくらいの余裕を持って、異文化コミュニケーションに挑戦してみてください。その経験はきっと、あなたの視野を大きく広げ、人生をより豊かにしてくれるはずです。


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